高頭町の人々
Part_1

平賀 一穂

移住年 ・2024年 // 出身地・新潟県長岡市 // 職業 ・農業

「自分が食べるものは自分で作る」で始めた農業

高頭町の人々、トップバッターに選ばれたのはレゲエをこよなく愛する農家の平賀一穂氏。

もともと高頭町の耕作を担う農業法人の百笑会に所属しこの土地で農業をしており、かねてからこの土地には可能性を感じていたという。

半空き家だった物件の家主と長い交渉の末、ついに2024年の夏に売買が決まり、同年の冬には引っ越すことに。今回はその引っ越し前のタイミングをみてのインタビューになります。

彼よりもより少し早く高頭町に移住を決めた筆者が、彼の想いや将来の展望について話を聞いてきました。
始めに経歴を聞いていると、実は筆者と平賀氏は同い年で、しかも1年間だけ同じ小学校に通っていたこともあるということがわかりました。お互いに面識は全くありませんでしたが(笑)

なので今回のインタビューは基本的に敬語は無しになっておりますので悪しからず。

やはり長岡は狭いですね。

__まさか同級生とは。静かで良い場所だね。

小学校大きかったからね。クラスが違えばわからないよね。

ここは車が全然通らないのが良いよね。下の方はそこそこ車通るけどここは全く通らない。

__確かに。この先は調整池があるだけだもんね。

外でも人目を気にせず過ごせるのは高頭の魅力だよね。

家全然ないからね(笑)

普通に田舎だとしてももうちょい家あるしね。めちゃくちゃ自由。

__完全に偏見だけど平賀君のような人にはぴったりな場所だよね。

東京の大学から長岡に戻ってきた理由を教えてください。

東京でたまたまできた友達が長岡の人間で、彼に地元で一緒にレゲエをやろうと言われて、楽しそうだなと。

大きな音響システムとかも作って色々やってきた。もちろん今もやってるよ。

__なるほど、もはやライフワークだね。

長岡に戻ってきてからはどんな仕事を?

仕事も色々やってきたけど一番長いのは飲食。25から34歳までだったかな。居酒屋の店長的な。

接客が好きだったからわりと楽しくやってたよ。

__てことはその後に農業を?

うん、結婚して子供もできてそろそろ別の仕事も考えてたんだけどその時気が付いたのよ。

まかないが無くなる!って(笑)

だから自分が食べるものは自分で作らなきゃなと思って農業になったわけ。

__きっかけに説得力があるね(笑)

でも前職から料理もできるわけだしただの農家さんでは終わらない広がりもありそうだね。

もちろんその辺も考えてる。いずれはここで採れた野菜を使う飲食店とかをやる可能性もあるし。

仲間たちとの繋がりとフットワークの軽さが自分の武器だと思っているから、目指す状態に近づくためにできることはやるつもりだよ。

__良いですね。その豆は?

これは小粒大豆。納豆とか味噌とかにするやつ。今仲間達と一緒に男味噌っていう会を作って実際に味噌づくりをやってるの。同じ材料を使っても寝かせる環境とかによって味わいが全然変わるから面白いし、何より美味い。

残りの人生で種を蒔ける回数

__生活する上で必須になる食品を自分で、しかも仲間達と楽しく作っていく。

まさに理想の暮らし方だね。

そう。楽しいっていうことが一番大事。今も手前に見える畑は仲間達と一緒にやってたりするよ。

__人の輪からの広がりを感じます。

けど広がりってのは自分にとって良いことばかりではないのよ。自分にとっては始めたばかりの農業、今が40歳だからとりあえず動けるうちは農業をやるとして、種を蒔けるのはせいぜいあと20回から30回ぐらいしかない。

今まで色々とやってきたけどこれからは回り道をする時間は無いと思ってる。

だからある意味付き合う人も選びながら、あくまで自分のペースで目標に向かって進んでいくつもり。

__面白そうなことをしている人の周りには色んな人が集まってくるからね。

気が付けば我々も40でもう若手ではないもんね。焦る気持ちはわかるけど、それ以上に平賀君からは自分に対する厳しさみたいなものを感じるけど。

ずっと剣道やってたからね。小学校から高校まで。引き際を感じてやめたけど。

一つのことを突き詰めることは嫌いじゃないんだよね。

__なるほど納得。根が真面目なんだね。

どうかな(笑)

__よく見れば真面目さが顔に出てる(笑)

ちょっと家の方も見せてもらえますか?

もちろん。まだ引っ越し終わってないし何もないけどどうぞ。

真面目な男についたバカ(センダグサ)の種を取る奥様。物静かだが後方からしっかりと家族を支える、熱い彼には最良のパートナーといった印象

平賀氏が購入した物件の敷地はとても大きく、苔むした裏山や農作業用の納屋など、好きな人にはたまらない要素が詰まっています。

主屋の中も古いながらもしっかり手入れされていた様子がうかがえる、可愛らしい佇まいのお宅でした。

__ありがとうございました。本当に良い物件だね。これでいくらだっけ?

言えない(笑)

最初は全然折り合わなかったけど根気よく交渉して結果的にかなり安く譲ってもらえた。ありがたいね。

__根気よく交渉するのが大事とは山田さんも言ってたね。

やっぱり住んでた人には思い入れのある物だから、はいどうぞ、とはなかなかならないと。

__この家の前の庭もかわいいよね。ここはこれから奥さんが手入れしていくのかな?

いや、ここでは木を切って鶏を飼うつもり。この環境なら美味い卵産んでくれそうだし。

家の方もこれからがっつりリフォームしたくて、玄関を移動して大きな土間にしようと思ってる。

__それも良いですねえ。金銭的なものではない、豊かさのある暮らしが想像できる。

最後に少し今後の目標を聞かせてください。

高頭町ブランド

高頭町ブランドの確立だね。簡単に言うと。

ここで無農薬の野菜を作って、売る。もちろん加工品を売っても良い。

もちろん安売りはせずに価値のわかる人に届ける。

地理的にも魅力があるから農作物だけじゃなくトータルでブランディングしていきたい。

__条件のそろった場所ではあるよね。なじらーて(近所の直売所)とかで売るのとは違うわけ?

それをやったらダメ。

大半の農家は作物を自分で売ることができないからああいう直売所とかに置くんだけど、そうすると必然的に価格競争になる。そうなると大規模農家ならともかく俺たちみたいなスケールの農家が生活していくことはできない。

__付加価値のついた高価な農産物を売る戦略はある?

戦略も何もまずは(無農薬野菜は)味が全然違う。食べればすぐにわかると思うから、しいて言えばその味に触れる機会を作ることかな。

だからどこかのタイミングでこの町に直売所を作りたい。そこを自分で運営すれば生産者と消費者のコミュニケーションもとれるし。

__確かにそう言われると本当に食べてみたくなるね

その後おもむろに人参を収穫してきた平賀氏。彼の話を聞いた後だからか見た目からもとても美味しそうでした。

数本くれるとのことなのでありがたくいただき、その晩に食べましたが確かに美味でした。

一言でいえば味が濃い。サイズこそ小さいもののスーパーで売っているものとは一味違う魅力がありました。

__今は野菜だけだけど、そのうちお米もやるの?

もちろんやるよ。でもあくまで自分のペースでね。

ついでに高頭は農業を効率だけでなく効率だけじゃなくて体験としてのビジネスも展開したい。
興味のある人を募って、消費者が自分で米を作れるような仕組みを作りたい。

あと君も自分の食べる分は自分で作ればいいと思っているし、そういう町になればいいと思っている。

__面白いね。高頭にはもう少し新しい住民が移住する余地があるけど、どんな人に来てもらいたいとかはある?

そもそもこの時代にこういう場所に住みたいって人は変な人しかいない(良い意味で)と思うけど、やっぱり面白い人が良いかな。住民の数が少ないから助け合いは必要だし、理想を言えば価値観が似通った人に来てもらえるとありがたいかな。

__なるほど、友達とまで言えなくともリスペクトできる人に来てもらえたら嬉しいなとおれも思うよ。

今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

平賀一穂

岩手県出身。実父の転勤に合わせて青森、千葉と引っ越した後に新潟県長岡市に。剣道少年だった少年時代から友とレゲエに出会い今に至る。今後無農薬を中心とした専業農家として高頭町を中心に活動予定。